(2009年10月19日更新)
*チラシ画像の後に「本番までの通信1-3」があります。


■ 第9回 トロッタの会

鉄と
コンクリートの街に
潮騒を聞く
砂浜があった
街角の向こうに
夜明けの海が見える

それは青
深くて濃い
生命を今も
育んでいる

2009年9月27日(日)15時開演 14時30分開場
会場・エレクトーンシティ渋谷

『La Nouvelle Chanson de IMAI Shigueyuki』2009
作曲/今井重幸
「ピノッキアーナ」編曲・清道洋一 詩・今井重幸
「風はつぶやく」編曲・橘川琢 詩・尾嶋義之
「哀しみの海の滄さ」編曲・橘川琢 詩・山本雅臣
ヴォーカル/笠原千恵美 フルート/田中千晴 オーボエ/今西香菜子 クラリネット/藤本彩花 ヴァイオリン/田口薫 ヴィオラ/仁科拓也 チェロ/香月圭祐 ピアノ/並木桂子 バンドネオン/生水敬一朗 エレクトーン/大谷歩

『アルバ/理想の海』2009
作曲/大谷歩 詩/木部与巴仁
ソプラノ/赤羽佐東子 ヴォーカル/笠原千恵美 詩唱/木部与巴仁 ヴァイオリン/戸塚ふみ代 ヴァイオリン/田口薫 ヴィオラ/仁科拓也 チェロ/香月圭祐 エレクトーン/大谷歩

『花骸-はなむくろ-』op.37 2009
作曲/橘川琢 詩/木部与巴仁
詩唱/木部与巴仁 詩唱/中川博正 フルート/田中千晴 ヴァイオリン/戸塚ふみ代 花/上野雄次

『ムーヴメント〜木部与巴仁「亂譜」に依る』2007/2009[編作版初演]
作曲/田中修一 詩/木部与巴仁
ソプラノ/赤羽佐東子 打楽器/星華子 ピアノ/森川あづさ エレクトーン/大谷歩

フルート、ファゴット、エレクトーンのための『青峰悠映』-序奏と田園舞- 1989/2009
作曲/今井重幸
フルート/田中千晴 ファゴット/平昌子 エレクトーン/大谷歩

『Venus 4〜6』1972
作曲/Alejandro BARLETTA アレハンドロ バルレッタ
ヴァイオリン/戸塚ふみ代 バンドネオン/生水敬一朗

詩曲『宇の言葉〜七角星雲・光うた・火の山〜』op.39 2009
詩・作曲/橘川琢
詩唱/木部与巴仁 ヴァイオリン/戸塚ふみ代
*予定されていました『1997年 秋からの呼び声』は差し替えられました。

『アルメイダ』2009
作曲・清道洋一 詩・木部与巴仁 ソプラノ/赤羽佐東子 ヴォーカル/笠原千恵美 詩唱/木部与巴仁 詩唱/中川博正 ヴァイオリン/戸塚ふみ代 ヴァイオリン/田口薫 ヴィオラ/仁科拓也 チェロ/香月圭祐 フルート/田中千晴 オーボエ/今西香菜子 クラリネット/藤本彩花 ファゴット/平昌子 ピアノ/徳田絵里子 エレクトーン/大谷歩

『めぐりあい 秋』2008/2009
作曲/宮崎文香 編曲/大谷歩 詩/木部与巴仁
出演者とお客様による合唱・合奏












トロッタの会 本番までの通信
TOROTTA9

第1号(7.18) 第2号(8.28) 第3号(9.12) トロッタ9チラシ
 


トロッタ9 本番までの通信;3(9.12)

街 焼き尽くさば
瓦礫なす 荒れ野なり
見たし と思へど
街のさま すでに
瓦礫なりや
われ ひとともに
あてどなく
往き来する か

心 乱る
ひとり居(い)に 交わりに
問へど その故 くらし
身を割く
ひびわれの道に似て
割けと ひたすらに
乱る か

白々明けの街に
寂しき 靴音響く
あてどなし 影を追ひ
ひたすらに 往く
山となり おびただしく積む
心写しの 瓦礫
疾風(はやて)たち 白き頬に
ひと筋の血 にじむ
あざやかなり 赤

田中修一・作曲 木部与巴仁・詩
『MOVEMENT』(原詩「亂譜」)

 トロッタ9まで、残り2週間となりました。2週間後には、本番です。最低でもあと2回、何としても「本番までの通信」を出そうと思います。
 ここに掲げました詩は、田中修一さん作曲の『MOVEMENT』に用いられる詩「亂譜(らんふ)」です。これは田中氏が何度も語っていることですが、2台ピアノのための曲をと私が求めまして、私も彼も、2台ピアノの演奏にふさわしい作品をめざして創りました。人によって、ピアノを2台使う必要を疑問視する意見もありましたが、私はこれでいいと信じます。仮に、その疑問が正当であったとしても、人には実験をする自由があります。そのことに限らず、人の熱意に水をさすような態度は、尊敬できるものではありません。トロッタ3で初演された曲であり、2年が経ち、トロッタ9でエレクトーン版として生まれ変わることになりました。
 新宿駅西口方面に、高層ビル群があります。人の叡智を集めて造られた建築物ですが、温かみを感じるでしょうか。人の姿が見えません。大勢の人が中にいるのですが、外部の者はまったく拒絶されて感じます。そのようなものを造るのが人の叡智だとは、思いたくないのが本音です。だらしなくていいから、人間らしくありたいと思います。
 トロッタの会に限らず、音楽や文学は、人間らしさを求めるものでしょう。コンピュータ音楽が人間らしいかどうか。今は判断できません。この文章もコンピュータで書き、コンピュータでお読みいただくのですから。現代人の生活から、コンピュータを全面的に排除してしまうことはできないと思っています。では、どうするか? 考え続けてまいります。
 高速鉄道、高速飛行機、高速船。どれも便利であり、もちろん私も利用しますが、速ければいいというものではないと思います。どれも外部を遮断し、冷たい外見をしています。人の能力を大幅に超えるものは、おおむね冷たくなるようです。そうした乗り物で身体をいためた例を見聞きします。私自身、高速鉄道から降りた時、非常に疲れた記憶があります。
 このような考えを表わしたくて、「亂譜」を書いたのではありません。しかし、高層ビル群に瓦礫を感じたことは確かです。ニューヨークで起きた同時多発テロ事件で、まさに現代の叡知から生まれた高層ビルが、瓦礫になってしまいました。この詩を、その光景に重ねて詠むことも不可能ではありません。現代人は知ってしまいました。あのような建物を造れば、いつの日か、瓦礫になってしまうことを。戦争による惨状にも、同じことがいえます。
 この曲を歌うのは、ソプラノの赤羽佐東子さんです。赤羽さんには、田中修一さんの曲を、多く歌っていただいています。赤羽さんの声で瓦礫が広がる都市の光景を歌うとは皮肉ですが、真の凄みは、美しさを通してこそ表現されるのではないでしょうか。
 皆様のご予約を、お待ち申し上げます。  〈木部与巴仁〉


トロッタ9 本番までの通信;2(8.28)

ちひろのそこにあるといふ
あおきみやこへたびをせむ
ちひろのはてにきえてゆく
ゆめのみやこでゑひたしと
うみのそこにもゆきはふる
うみのそこにもつきはてる
うみのそこにもはなはさき
うみのそこにもとりはとぶ
いくせんねんがすぎてゆく
ただ またたきのまに

清道洋一・作曲 木部与巴仁・詩
『アルメイダ』より「千尋」

 第9回「トロッタの会」まで、残り1か月となりました。エレクトーンシティ渋谷でトロッタを行うプランは、すでに昨年の夏に生まれていました。1年がかりの実現です。長いように感じていました。しかし、あと1か月。本番は9月27日(日)15時開演です。関係者を含め、会場にいる全員が新しい世界と向き合います。
 他愛もないことですが、以前、今回のトロッタ9は海の印象が強いと書きました。その文章を、8月初旬にしたためたせいであったでしょう。大谷歩さん作曲の『アルバ/理想の海』や、清道洋一さん作曲の『アルメイダ』といった、海に関わる曲が並んだせいもあったでしょう。夏と海にちなむ曲を、昨年の段階では演奏するプランであったことも、関係しているかもしれません。しかし、本番は9月27日(日)であり、季節は秋です。私にとって、海といえば夏ですが、この思いこみは、通じません。秋の海もあります。冬の海もあります。海を前に、解釈と表現を広げなければならない、柔軟にならなければと痛感します。
 冒頭に掲げました詩は、『アルメイダ』の一篇、「千尋」です。清道洋一さんから、詩を書いて欲しい、と依頼された時、テーマは“架空のコマーシャル”でした。街や家庭で見聞きする、さまざまなコマーシャルがあります。そのための詩を創れないかと求められたのでした。考えましたが、難しく、コマーシャルとは世界を伝えることだと拡大解釈し、架空の国を作って、そこにまつわる様々な詩を書こうと思いました。国の名は、アルメイダ。海に浮かぶ海国として知られている、という設定です。−具体的にいえば、コマーシャルだと、コミック・ソングのようなものも書かなければ面白くなく、それは私には難しいという判断がありました−
 古謡としての「千尋」を始め、国歌「碧(あお)き国」、フォークソング「鳥」、歴史を題材にした歌「微笑みこそ」、現代詩にもとづく歌「ひとで」「わだつみ」「夜の海」、アルメイダを舞台にした歌劇『アルメイダ』より「王妃の詠唱」を書き、これらを散文詩「亡命詩人」で結びつけました。
 しかし、原作どおりに楽曲化しますと、一時間ではとうていおさまらない規模になります。トロッタで一曲に長時間を使うわけにはいかないという理由と、詩に引きずられない、清道さん自身の音楽にするためでしょう、彼は大胆な改変作業を行いました。トロッタ9で演奏される『アルメイダ』は、原作の何分の一かです。さらに、清道さんの創作によるせりふなどが、大幅に取り入れられます。私と清道さんの世界というより、清道さん単独の世界といった方がいいでしょう。どの作曲家との作業も、私はそれでいいと思っています。*ちなみに、トロッタ9が終わった直後、9月30日(水)から10月12日(月・祝)まで、東京・谷中のカフェ、谷中ボッサにて、造形と詩の共同展「扇田克也+木部与巴仁〈ユメノニワ〉」が行われ、初日と10月11日(日)、「ボッサ 声と音の会vol.5 音の形、詩の形、夢の形」が行われます。その二日目に、清道氏は『即興的断章 アルメイダより』を発表します。トロッタ9とは違う『アルメイダ』が聴けるでしょう。
 詩と音楽が融け合い、詩人の思いもよらない音楽が生まれようとしています。お楽しみに。
 御予約、お問い合わせをお待ち申しあげます。  〈木部与巴仁〉


トロッタ9 本番までの通信;1(7.18)

鉄と
コンクリートの街に
潮騒を聞く
砂浜があった
街角の向こうに
夜明けの海が見える

それは青
深くて濃い
生命(いのち)を今も
育んでいる

何もかも信じていた
あれはまだ
幼い少女のころ
光と戯れる

空と海の境界線に
生きていた

大谷歩・作曲 木部与巴仁・詩
「アルバ/理想の海」より

7月17日(金)、小松史明さんから、トロッタ9の仮チラシが送られてきました。あくまで仮チラシであり、本チラシではありません。曲や曲順を含む文章はもちろん、小松さんのデザインも変更される可能性があります。判型も、今は小さいのです。しかし、いつもながらに力強く美しいチラシが姿を現しました。
仮チラシは、当面、トロッタのメンバーが出演する演奏会や、早めに配布できる場所などの告知に使われます。断り書きに、「曲と曲順などは変更される予定です」とあります。ほぼ、仮チラシのとおりに演奏される予定ですが、いずれは本チラシを御手元に置いていただければと思います。お目にとめられました方は、ぜひ御連絡をください。本チラシを進呈いたします。
「ご挨拶」にありますとおり、トロッタ9はヤマハ エレクトーンシティ渋谷を会場とし、エレクトーンを用いた曲を演奏いたします。私どもにとって、未知の要素が非常に多い会です。あるいは、もしや、という不安が頭をもたげますし、予想できないので不安すら抱かない点があると思います。しかしトロッタは、常に不確実性を抱えて進んでまいりました。作曲家が、新曲を書く。このこと自体、すでに不確実ではないでしょうか。私にしても、詩が書けるかどうかわからない、書き出してみなければどうなるかわからない。不確実極まりない生活です。
上に掲げましたのは、大谷歩さんが作曲してくださいます『アルバ/理想の海』の始まりです。“私には理想の海があります”という、大谷さんの言葉を頼りに、一篇を書きました。私は大谷さんではないので、これは私の海です。大谷さんと交感をしながら、詩を創ろうと思いました。真の交感は、初演の舞台で、他の演奏者、お客さまを交えて、なされます。
お聴きいただく皆様どなたの心にも、海の姿があることでしょう。海のない国にお生まれになった方には、山でもよく、川でもよく、森でも一本の木でもかまいません。人知を超えた大きなもの、目に見える大小ではなく、小さくてもそれ自体で完成され、宇宙を持ったものにひかれ、そのことを書きたいと思いました。常に、書きたいと思っています。
チラシの表面に、やもりの姿が見えますか? 小松さんからチラシが送られてきた時、ちょうど、本物のやもりが、窓枠を乗り越えて部屋に入ってきました。ぴぴぴっと、やもりは私に呼びかけました。私たちにとっては、幸運のやもりだと思います。他力にすがるつもりはなくても、やもりが交感をしようと、やってきたくらいのことは思っていいでしょう。小松さんの絵にいるやもりが、本当に鳴きながら現われたのですから。彼か彼女は、何をいいたかったのか? そのことを考えながら、9月27日(日)、トロッタ9の本番までを過ごします。



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